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励ますことの大切さ

5年近く小学生から大学生まで
教えてきました。

学校の教師ではないので、不定期に
集まってくれる学生だけを対象に
しています。

会える時間は長くて90分。
小学生だと1時間もありません。

その中で、何かを教えようとしても
たかが知れています。
「作文術」を教えても、それが
身についたかどうかを確かめられない。
たとえ、その時よくできていても、
すぐに忘れてしまうことも多いでしょう。

私の授業内容は、だんだんとシフト
していきました。

「勉強」から「勉強のやり方」へ。

テキストの一部を教えるのではなく、
どのように勉強をすればいいのか。
どうすれば記憶力がよくなり、
人前で発表できるようになるのか。

こういうことを教えるようになりました。

昔の学校は授業にも余裕がありました。
先生の無駄話の中から「やり方」を
習ったりしました。
今は全くこれがありません。先生の授業は
15分単位でどこまで進めばいいのかが
決められているようです。

そしてもうひとつが、

「教える」から「励ます」へ。

いくら教えても、子どもたちに
自信がなければ身につきません。
小さく丸まって「指されないように」
と祈っているような子は、学ぶよりも
時が過ぎ去るのをじっと待っている
かのようです。

そこで私は、自分が昔いかに
本を読まず、成績が悪く、学校にも
いかなかった人間かという話から
入ります。

これは作り話ではありません。
学校にいく理由も、勉強する必要性も
子どものころにはひとつもわかって
いませんでした。
当時に戻ると、勉強する子どもより
しない子どもの方がずっと親近感が湧く。

「僕も同じようなものだったんだよ」

というところから入るようにしました。

そこからどうやって、文章を書く人間に
なっていったのか。
どういうところに勉強や本を読む面白みを
感じていったのか。

そんな話をするうちに、子どもたちが
前を向いてくれるようになります。

「だから、大丈夫。君もできる」

という締めくくりになるように、
話を構成していくのです。

今の世の中、喋る人と書く人は大量に
います。
その分、聞く人と読む人が少ない。
もっと少ないのが、「励ます人」だと
思っています。

昔、近所のおじさんが、私の成績も
知らないのに、

「よっちゃんは、頭がええ子や」

と言ってくれた。
となりの同級生の女の子に、

「べっぴんさんやから、宝塚いけるで」

と声をかけていた。

そこにエビデンスなるものはひとつも
存在しないけれど、なんだか無性に
うれしかった。自信がつきました。

ああいう大人がもっといていいんじゃ
ないかと思う。
特に「オトハル世代」は、もっともっと
人を励ましていいように思うのです。

励まし続けた子の一人は、
中学受験で残念ながら、第1志望には
入れませんでした。
どう励まそうかと思っていたら、
手紙が来た。

「卒業文集の文章が、どうしても
気に入らないので、見てください」

なんだか、彼女の方から励まされた
気分になりました。

・・・

<ひきたよしあきプロフィール>
株式会社 博報堂スピーチライターとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。
現在(財)博報財団にコラム「こどものコトダマ」、博報堂マーケティングエグゼクティブに「経営のコトダマ」、朝日小学生新聞「大勢の中のあなたへ4」、日経BP「カンパネラ」に「生きる力の強い女性」を執筆中。
<著書>
「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)
「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)
「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)
「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)
「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」(かんき出版)
「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)
「ひきたよしあきの親塾」(朝日学生新聞社)
「5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本」(大和出版)
「博報堂スピーチライターが教える口下手のままでも伝わるプロの話し方」 (かんき出版)

新著書「博報堂クリエイティブプロデューサーが明かす 「質問力」って、じつは仕事を有利に進める最強のスキルなんです。」 (大和出版)
https://www.amazon.co.jp/dp/4804718591/

質問力

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