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加速する1年の時間を食い止める方法

ハロウィンが終わって、街角にクリスマスツリーが
立っています。
お店に入ると年賀状や新しい手帳が売られています。

「もう今年も終わりかぁ・・・」

と嫌が上にも気づく時期。
手帳を繰ると、確かに残りは数ページになって
いました。

それにしても1年が早い。
5年の間に11冊の本を書きました。
そのうちの4冊が今年書いたもの。
来年3月に発刊される本を数えると
5冊も書いたことになります。

サラリーマンとして働きながら、
講演や講義をこなして5冊本を書く。
そりゃ時間がいくらあっても足りません。

本を書く作業は、締め切りに追われます。
発売日を厳格に決められるので、
その進行に合わせて書き進めなければ
なりません。

人間ですから気分が乗らない日もある。
忙しかったり体調が悪いこともある。
それでも容赦なく時間は自分の取り分を
もっていきます。温情もズルもなく、
きっちり1日の時間の取り分をもって
いきます。

息抜きをしても、ストレス発散をしても
効率がよくなるとは限らない。
そこで消費した時間分は、きっちり
締め切りまでの作業にのっかってくるの
ですから。

1年が早く過ぎていく。
それを食い止める方法はないか。

と思っていたら、エッセイストの
岸本葉子さんの

「五十になるって、あんがい、ふつう」
(ミスターパートナーブック)

の中に、

「ふたつ以上のことを併行してするのは、
自分に禁じ、やかんを火にかけたなら、
沸騰するまでの間、その場を動かず、
つきっきりで見守る」

という一文がありました。
岸本さんは、水が沸騰するまでの時間、
着替えをしたり、洗濯物をとりいれたり
効率的に動いてしまいます。
歳をとればこの効率が仇となり、
火をかけたことも忘れて他のことを
やるような人になってしまう。

その前に、湯沸かし器の前でじっくりと
待つ我慢強さをもつこと。

これが時間貧乏とさようならする
方法だと問うているのです。

読んだ時、思わず深くうなずきました。
一人暮らしで執筆をやりながらサラリーマン
もこなしています。
出張も多く家にいることが稀。
家事をするときは、どうしても
千手観音になんでもかんでもやろうと
する。
これが時間貧乏の元になっているでは
ないでしょうか。

年齢とともに多くのことを短時間で
処する能力は落ちます。
しかし、これは単なる肉体の衰えではなく、

「ひとつひとつの物事を、単品で味わいなさい」

という神様かからのメッセージではないでしょうか。

そうすれば確実に時間が生まれる。

黙って水が湧くのを待つ。

このゆとりこそが、1年をゆったりと
過ごす秘訣だと感じています。

マルチな自分から卒業し、
一瞬一瞬をただひとつのことで
三昧する。

来年はこうした時間を多く作りたいと
思っています。

でも、このコラム。
朝、会社にいく時間を削って書いています。
コーヒーを沸かし、洗濯機が回り、
時折メールをチェックしながら書いている。
時間貧乏とはまさにこのことです。

せめて朝食は、YouTubeやFacebookを
眺めることなく、一心に集中して
おいしくいただきます。
・・・

<ひきたよしあきプロフィール>
株式会社 博報堂スピーチライターとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。
現在(財)博報財団にコラム「こどものコトダマ」、博報堂マーケティングエグゼクティブに「経営のコトダマ」、朝日小学生新聞「大勢の中のあなたへ4」、日経BP「カンパネラ」に「生きる力の強い女性」を執筆中。
<著書>
「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)
「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)
「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)
「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)
「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」(かんき出版)
「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)
「ひきたよしあきの親塾」(朝日学生新聞社)
「5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本」(大和出版)
「博報堂スピーチライターが教える口下手のままでも伝わるプロの話し方」 (かんき出版)

新著書 2019年11月7日発売予定 Amazon予約受付中

「博報堂クリエイティブプロデューサーが明かす 「質問力」って、じつは仕事を有利に進める最強のスキルなんです。」 (大和出版)
https://www.amazon.co.jp/dp/4804718591/

質問力

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