勉強しよう。

 
学生の頃、勉強が嫌いだった人は
大勢いると思います。

私も嫌いでした。
大嫌いでした。
成績もそうはよくなかったし、
浪人もしました。

今でも英語をしゃべれないし、
飲み屋で割り勘にするときも
スマホの計算アプリをすぐに
開きます。

しかし、今、

「勉強は好きですか？」

と尋ねられると、間違いなく
「好き」と答えます。
「大好き」かもしれません。

一体、何が違うのか？
その答えは簡単です。

「試験がないから」

です。

試験とは、合否のラインを決める
ほかに、他者と比較する基準に使われます。

「あいつは１００点とったのに、
僕は６３点だった。
けっこう一生懸命勉強したのになぁ。
やっぱり僕には才能がないんだ。
生まれつきバカなんだ」

こんな風に考えて、なんどできる友人の
脳みそと自分のものを取り替えたいと
思ったことでしょう。

昭和の偏差値教育の申し子のような
世代。
そろそろ定年退職だというのに、
今だに入試の夢をみるのだから重症です。

しかし、今はその試験がない。

誰と比較されることもなく、
自分の好きなものを学べばいい。

学生の頃は、

「この本を読んでないなんて、
恥ずかしいよ」

なんて言われると、素直に従ったり
もしたけれど、今では、

「そんなの読まなくたって十分楽しく
生きてきたぜ」

と言い返せる。

人からとやかく言われずに、
学んで、いろいろなことがわかって
くる感覚は。学生時代にはない無上の
喜びでもあるのです。

最近、とくに面白いのは、哲学。

いや、そんな固いものではありません。
カントやヘーゲルなどを読んでなくても
人は哲学を語れるものです。

「生きるって、どういうことだろう」

という実にテツガク的な問いをした
ところ、ある女性が、

「そんなこと考えないですむこと」

と言って、お寿司をぺろりと食べました。

「死」について、学生２人と話していたら、

「そういうことばかり考えていると、
長生きできませんよ」

「ひきたさんくらいの年代になると
誰でも考えることじゃないですか」

と言われました。

実に大したことのない発言に見えますが、
万年筆でおごそかにそれらの言葉を記して
みると、なんだかとても深い哲学的名言に
感じられるのです。

学生の頃、テストの点で比較されていた
他の人が、今では、学びの対象となる一言を
語ってくれる存在になっている。

こうした言葉や情報を集めて、
「そうだったのか！」とわかる瞬間を
増やしていく。

実に楽しいことです。

どうでしょう。
学生時代の「勉強」を捨てて、
森羅万象、なんでも勉強だと思って
みませんか。

確実に毎日が楽しくなります。
学びを忘れた瞬間に人は老ける。

どんなことからでも学ぶことが
できると思って、
いっしょにあれこれ学んでいきましょう。

 

 

・・・

＜ひきたよしあきプロフィール＞
株式会社　博報堂スピーチライターとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。
現在（財）博報財団にコラム「こどものコトダマ」、博報堂マーケティングエグゼクティブに「経営のコトダマ」、朝日小学生新聞「大勢の中のあなたへ４」、日経BP「カンパネラ」に「生きる力の強い女性」を執筆中。
著者に「あなたは言葉でできている」（実業之日本社）、「ゆっくり前へ　ことばの玩具箱」（京都書房）」、「大勢の中のあなたへ」（朝日学生新聞社）、「机の上に貼る一行」（朝日学生新聞社）、「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」（かんき出版）、「大勢の中のあなたへ２」（朝日学生新聞社）、「ひきたよしあきの親塾」（朝日学生新聞社）がある。
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