vol.9 脱ステレオタイプでまいりましょう
私は、昭和35年4月22日生まれ。
牡牛座のO型で、子年。
兵庫県西宮で生まれました。
早稲田大学を卒業し、
広告会社に勤めています。
この経歴を見た人が、こう言いました。
ひきたよしあきは、
「昭和のアナログ人間だな。
牡牛座だから、のんびり屋で
O型だから、おおざっぱ。
子年だから、ちょこちょこ
動くに違いない。
関西人だから、話がおもろくて、
早稲田だから、バンカラ。
広告会社に勤めているから
トレンドに敏感なんだろうな」
うーむ、あっているような、
ないような。
大体、「ちょこちょこ」しているのに
「のんびり屋」って矛盾してないか?
血液型B型は気分屋で、
A型はまじめでがんこ・・・
こんな風に多くの人に浸透している
先入観や思い込みなどで型にはめた
考えを「ステレオタイプ」と言います。
元々は、印刷のときに鋳型から打ち出された
プレートを「ステロ版」と言ったのが
語源だとか。
確かに人間をひとつの型に流し込んで
いるようなイメージがありますね。
「ステレオタイプ」でものを見るのは
非常に楽です。
「早稲田出身=バンカラ」
という型にはめてしまえば頭を使う
必要はありません。
しかし、残念なことに私のその
「ステロ版」はちっとも合わない。
へたれだし、軟弱だし、甘ったれだし、
男らしくない。汗くさいのも嫌い。
大声も嫌い。ガハハハ笑うような
がさつな奴は大嫌い。
早稲田にだって、弱虫もいれば、
スマートな人もいる。
ステレオタイプに振り分けられる
ものではありません。
しかし、ここ最近、あちらこちらで
「ステレオタイプ」にものを見ることが
増えているのではないでしょうか。
「バブル世代」に「ゆとり世代」
「正規雇用」に「非正規雇用」
「デジタルネイティブ」に「老害」
「日本人」「中国人」「韓国人」「台湾人」
などなど。
私たちは、こうした言葉の型にはめて、
その人をわかった風なことを言っています。
しかし、こうした安直な人物判定が、
どれだけ人間関係にひずみをつくり、
無駄な闘争のネタをつくっていることか。
「ステレオタイプ」に判断することで失う
ものの大きさを、私たちは真剣に考えなくては
ならない時期にきているようです。
あたりまえのことですが、
「バブル世代」にも倹約家やいるし、
「ゆとり世代」にもシャープで競争心の強い
人もいます。
「日本人」にもいい人もいれば、悪い人も
います。
血液型や生年月日を聞いて、その人を
「ステロ版」に流し込む前に、
自分の印象、気づき、判断で、自分視点の
「その人の印象」を確立すべきです。
お手本もないし、はめるべきプレートもない。
だからこそ見えてくる「その人」がいる。
「その人」の中にも色々な性質があることを
発見し、より複雑な人間像をつくっていく。
こういう頭の使い方ばかりやっていると、
人物を見抜く力が、どんどん退化してしまう。
その結果が、国名を聞いただけで過剰に反応
したり、人にも自分にも「レッテル貼り」して
自ら苦しんでいるようになるのです。
「ステレオタイプ」の人物鑑定から卒業し、
生地のその人を味わう。
そんな生き方が、これからの大人には
必要なのではないか。
何事も一方的に決めつけない。
こんな覚悟をしっかりもって
人には接していきたいものです。
・・・
<ひきたよしあきプロフィール>
株式会社 博報堂スピーチライターとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。
現在(財)博報財団にコラム「こどものコトダマ」、博報堂マーケティングエグゼクティブに「経営のコトダマ」、朝日小学生新聞「大勢の中のあなたへ4」、日経BP「カンパネラ」に「生きる力の強い女性」を執筆中。
著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)、「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」、「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)、「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)、「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」(かんき出版)、「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)、「ひきたよしあきの親塾」(朝日学生新聞社)がある。
4月に「5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本」(大和出版)、「博報堂スピーチライターが教える口下手のままでも伝わるプロの話し方 (かんき出版)が同時刊行。
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