vol.6 おせっかい上等！

現在、私のFacebookの友だちの数は4,221人。
数えたことはありませんが、顔写真を眺める限り、
７割は女性です。

「そんなにモテるのか！」

というと、どうも事情が違う。
愛を告白されること、「好きだ」と言われることは
皆無に近い。
「すてき」とか「かっこいい」とか書き込まれる
ことも少ないです。

ところが風邪をひいて「喉が痛い」なんて書き込むと
メッセージ欄が「喉の腫れ」同様に真っ赤になる。
多い時は、７０近い書き込みがあります。

開いて唖然。

「お茶でうがいしてください」
「のどを冷やさないようにスカーフを」
「プロポリスありますか？」
「はちみつ大根の作り方知ってますか」

と、テレビの健康番組のような
状態になります。

驚くのは、そのクオリティの高さ。
医学用語もふんだんに、漢方あり、
名医紹介あり、バイオリズム診断による
現在の体調の状況あり。

これだけの的確な書き込みを瞬時に
書き込める日本人女性の健康リテラシーの
高さには驚くばかりです。

読むと、私の不摂生に対しての
小言も多い。

「今週は、３回も会食しているから
胃が疲れているはずだ」

という書き込みを見て、スケジュールを
みると本当に３回食べている。
にやけた写真を掲載しているので、
すぐにバレます。

書いた本が「台湾で発売される！」
と投稿した。褒めてくれるのかと思ったら、

「顔出しする機会が増えているんだから
本格的にダイエットしたら」

「ダイエット！ダイエット！」

と私の見栄えに関するアドバイスが
続きました。

これはどうも男女の関係ではない。
どこからどうみても、お母さん状態です。

これを「めんどくせーなぁ」と思うことも
正直ちらりとありますが、それを圧倒する
質量の書き込みを読むにつれ、

「良質なおせっかいパワー」

について考えてしますのです。

「おせっかい」という言葉は通常、
相手の気持ちを考えずに、自分で勝手に
相手によかれと思って行動する意味に
使われます。あまりいい意味ではありません。

しかし、私の職場を見ても、講義にいく
学校を見ても、SNSを眺めてみても、
世の中の多くは、「おせっかい」の力で
回っているように思うのです。

相手のためなら苦労も厭わない。
知ってること、やれることをやってあげる。
自分の職域や立場を超えて動く。
主に女性たちの良質なおせっかいが、
社会を動かすエンジンとして機能しているのは
間違いありません。

もし、この「良質なおせっかい」がなくなったら
世の中は間違いなく殺伐とします。
決められたこと、自分の範疇以外のことは
やらないし、言わない世の中が、そんなに
幸せだとは私には思えません。

もちろんこれは、善意で良質なおせっかいの
話で、相手にとって迷惑なおせっかいが
あるのは承知の上のこと。
私は「良質なおせっかい」にあふれる世界が
案外、好きです。おせっかい、上等！です。

おかげさまで、風邪もすっかり
よくなりました。

次の講演に向けて、ダイエットしようかな
という気にもなっています。

たくさんのメッセージをくださる皆様に
この場を借りて感謝。

うがい、手洗い、忘れません。

・・・

＜ひきたよしあきプロフィール＞
株式会社　博報堂スピーチライターとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。
現在（財）博報財団にコラム「こどものコトダマ」、博報堂マーケティングエグゼクティブに「経営のコトダマ」、朝日小学生新聞「大勢の中のあなたへ４」、日経BP「カンパネラ」に「生きる力の強い女性」を執筆中。
著者に「あなたは言葉でできている」（実業之日本社）、「ゆっくり前へ　ことばの玩具箱」（京都書房）」、「大勢の中のあなたへ」（朝日学生新聞社）、「机の上に貼る一行」（朝日学生新聞社）、「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」（かんき出版）、「大勢の中のあなたへ２」（朝日学生新聞社）、「ひきたよしあきの親塾」（朝日学生新聞社）がある。
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