vol.5 二足のわらじで、楽しく忙しく！

会社員でありながら、本を書いたり、大学で
講義をもったりしています。

こんな生活を、もう５年も続けています。

桃栗３年以上もやっているのですから、
変化があちこちにでてきます。

例えば、言葉の使い方。

会社の仕事は、組織で動くものが大半です。
そこには、強制もあり義務もある。
人も絡みますから、どうしても、

「〜しなくちゃ」
「〜しなければ」

という言葉使いになってしまいます。

「明日は５時半に起きなくちゃ」
「今日中にアポをとなくちゃ」
「明日までに終わらせなければ」

特に強く強制されてなくても、
こういう思考になっている。
義務と責任感でモチベーションを
上げていることもあるのでしょう。

ところが、執筆や講義は違います。
誰にも強制されません。
締め切りや講義日程はあるものの、

「やりたくなければやらなきゃいい」
というものばかり。
好きでやっているだけのことだから
誰も何も言ってきません。

こうなると、言葉が変わる。

「よし、明日は５時起きで書こう」
「今日中に編集部に送るぞ！」
「明日までに終わらせてやる！」

とやたらに積極的な自分がいる。
あきらかに言動に変化があるのです。

だからと言って、個人ベースの仕事が
いいという話ではありません。
社会の構成員として生きている限り、
義務や責任の伴う行動も大切。

「誰かのために、何かのための
〜しなければならない」

こんな使命感があるからこそ、
終わった時に達成感を味わうことが
できます。
これもまた働く醍醐味のひとつでしょう。

もうひとつの変化は、メモ。

集団で動く仕事の場合、メモの大半は
備忘録です。
人の発言をメモしたり、重要な日時や
事柄を書いていくのがほとんど。
たまに個人の意見も書くけれど、
割合からいけば少ないものです。

個人でやる仕事はこれが逆転します。

自分のアイデアメモがほとんど。
加えて、街で見聞きした面白い会話を
書き込むのが大半です。

スマホにメモをすることもありますが、
大半は小さな手帳やノート。
たまにはカフェのコースターや
紙ナプキンにも書き込むオールド
スタイルなメモです。

もちろん、公私の仕事がきれいに
分かれているのではなく、渾然一体
となっている場合の方が多い。

でも、５５歳あたりから始めた
講義や執筆の仕事が、私の中で
新しい精神が生まれてきたのは
確かなことでしょう。

二足の草鞋でなくてもかまいません。
メインの仕事以外にもうひとつ
のめり込むものがあれば、

「〜してみよう」
「〜しよう」

という「Let’sな精神」が生まれてくるはず。

義務や責任感とは別に
自由で無責任に想像の翼を広げられる
機会をもつ。

こうした努力は無駄にはならないはず。

２枚名刺をもつつもりで、もう一人の
自分を育てていく。

確実に自分を労わり、自分を
応援したくもなります。
少し忙しくなるけれど、
自分に励まされる自分を味わう
気分はかなりいいですよ。

人生１００年の時代です。
二毛作や二足の草鞋をどんどん
推薦すべきでしょう。

ちなみにこのオトハル　コラムは
会社の仕事以外の

「〜してみよう！」

の積極精神で書いています。
書き終わるときの達成感は
格別なもの。

次回も楽しんで書きます。
お楽しみに！

・・・

＜ひきたよしあきプロフィール＞
株式会社　博報堂スピーチライターとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。
現在（財）博報財団にコラム「こどものコトダマ」、博報堂マーケティングエグゼクティブに「経営のコトダマ」、朝日小学生新聞「大勢の中のあなたへ４」、日経BP「カンパネラ」に「生きる力の強い女性」を執筆中。
著者に「あなたは言葉でできている」（実業之日本社）、「ゆっくり前へ　ことばの玩具箱」（京都書房）」、「大勢の中のあなたへ」（朝日学生新聞社）、「机の上に貼る一行」（朝日学生新聞社）、「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」（かんき出版）、「大勢の中のあなたへ２」（朝日学生新聞社）、「ひきたよしあきの親塾」（朝日学生新聞社）がある。
４月に「５日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本」（大和出版）、「博報堂スピーチライターが教える口下手のままでも伝わるプロの話し方 （かんき出版）が同時刊行。

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