vol.2 また学歴社会がやってきた
ビジネス書における最近の売れ筋傾向を
ご存知ですか。
「東大」「ハーバード」「スタンフォード」
「グーグル」「マッキンゼー」「ボストンコンサル」
・・・
表題にこうした名前が書かれているものです。
学歴社会はいやだ、いやだと言いながら、
知らず知らずに買っている本にこうした
タイトルがついている。
しかもこの傾向が、ここ最近顕著になっています。
なぜでしょう。
それは、購買する本の選択にネットが大きく
関わってきたから。
本屋に行って、実際に本を手に取り
数行読んで、
「うむ、面白い。買おう!」
なんて人が減ってきてしまった。
ネットで新しい本を探そうとすれば、
何らかの信用が欲しくなる。
すると#東大、#ハーバード
といったわかりやすい項目が上に
あがってくるわけです。
見方を変えれば、ネットが新しい
学歴社会を生んでいる。
どれだけいい内容の本でも、
わかりやすい信用がない限り、
箸にも棒にもひっかからない。
そんな恐ろしい時代に突入している
わけです。
「うーん、それは定年後の世界も同じだなぁ」
と唸るのは、3年上の大学の先輩。
定年退職したものの、定職を持てず
仕事をしないわけにもいかず、
なんだか中途半端な生活を送られています。
「定年退職したら、しばらくゆっくりして
ボチボチ仕事を探そうなんて考えていたんだよ。
ところが、ゆっくりなんてできない。
ひきた、『退職後の四十九日』って知ってるか?
退職してひと月は、奥さんもやさしくしてくれる。
ところが、ちょうど四十九日を過ぎたあたりで、
『あなた、いつまでブラブラしているの』
と言われるんだよ。確かに顔を突き合して
いるのも辛くなってくる。
仕方ないからハローワークにいくだろ。
全くやりたい仕事がないの。
その上、自分には誇れる特技がないことを
嫌というほど味わう。
再就職には、分かりやすい資格が有利なんだよ。
結局、気に入ったものがないので
フラフラしてるだろ。
その時点では、まだ自分は、退職した
会社の社員みたいな感覚がどこかにあるんだ。
だから、
「『元〇〇商事の・・・』なんて言って
仕事を探そうとする」
すると、先方は?
「元、ですよね」
とこっちが気にしてることをいうんだ。
その上、私のような「元〇〇社」がいっぱい
いるんだって。
でも、もうその肩書きはないんだよ。
みんな一から探さなくちゃいけない。
正直、プライドが傷つくよ」
と一気にまくしたてられました。
先輩のアドバイスでは、まだ現役のうちから
定年後のことを考える。
会社の名刺をもっているうちから、
「実はこういう特技が僕にはあってね」
と折りにつけ言ってまわっておく。
「肩書きのあるうちに、次の職場を
探す。これが鉄則だよ」
と私の目を覗き込むのでした。
いやはや、この歳になって、受験と就活が
一度に戻ってくる感じ。
「そんなことでしか、人を判断できないのかなぁ」
と思いながら、家に帰って本棚を覗く。
ありました、ありました!
東大、ハーバード、スタンフォード、
コロンビア・・そんな名前の入った本が
ずらりと本棚にありました。
本棚は、自分の潜在意識のあらわれです。
完璧に、ニュー学歴主義につかまっている私。
「僕も現役のうちから動いておこう・・・」
そんな下心も満載にして、
寒かった春も、ようやく自らの陽気を
取り戻してきたようです。
私も頑張らなくちゃ!
・・・
<ひきたよしあきプロフィール>
株式会社 博報堂スピーチライターとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。
現在(財)博報財団にコラム「こどものコトダマ」、博報堂マーケティングエグゼクティブに「経営のコトダマ」、朝日小学生新聞「大勢の中のあなたへ4」、日経BP「カンパネラ」に「生きる力の強い女性」を執筆中。
著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)、「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」、「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)、「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)、「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」(かんき出版)、「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)、「ひきたよしあきの親塾」(朝日学生新聞社)がある。
4月に「5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本」(大和出版)、「博報堂スピーチライターが教える口下手のままでも伝わるプロの話し方 (かんき出版)が同時刊行。
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