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今こそ、控える

テレビをつけると、
国と国の、心ない言葉と態度の応酬が
映し出されます。
市民デモが、いつの間にか暴力に変わる
瞬間を流しています。

ネットをみれば、
ヘイトスピーチと揚げ足取りが
延々と続いている。
SNSのコミュニケーションは、
派閥と村八分を繰り返し、
ジギルとハイドも驚くような
陰日なたの顔が横行している。

ふと思うに、
バベルの塔が崩れされるときも、
人類はこんな状況に陥っていたのではないか。
むき出しの感情をひとつの言語で
ぶつけあう姿を人の姿に見て、
神様は、言葉を千々に分けてしまった
のではないか。

そんな世紀末の様相を呈しているように
思えるのです。

変わらなければいけません。
平成の次の世が間近に迫る今。
私たちは、直に会い、直に話し、
人の語勢を聞き、人の表情を思い、
襟を正して人と接することを
真剣に取り戻さなくていけません。

SQ(Social Intelligence Quotient)という
指数があります。
日本語で言えば、社会的知能指数。

ハーバード大学のダニエル・ゴールマン先生に
よれば、

「他者の感情や思惑について感じ取る能力があり、
その他者の感情を理解した上でどのように
行動すればよいかを認識できる能力」

がSQだそうです。

今私たちは、他者の感情や思惑について
感じ取ることが不得手になってはいないでしょうか。

人の感情を、忖度するかひねり潰すか。
その上で、自分が都合のいいように世界を
塗り替えていっている。

まずは、人の心を素直に見る力を取り戻す
ことが大切です。

そんなことを考えていた折、
新年のお茶会で、アメリカ人の男性が
半東を務める姿をみました。

半東とは、茶事が円滑に進むように、
亭主をサポートする役割のこと。

その日は新春の茶会で、襖を隔てた
部屋の中では点心が振る舞われていました。

半東の男性は、襖を隔てた部屋に
正座をしてずっと控えている。

ただ控えているだけでなく、
何かあってはいけないので、
耳をそばだて、佇まいを正し、
控えているのです。

姿は動かないけれど、
脳と全神経を激しく動かす。

この「控える」という所作が
これほど凛々しく、美しく見えたのは
世の中の乱れと深い関係があるように
私には思えました。

誰かのために、
全身全霊をかけて「控える」

この美学を一人ひとりが心がける
ことで、社会的IQが確実に上がるように
思えたのです。

私たちも襟を正し、忖度と中傷誹謗と
村八分の轍から抜け、誰かのために控える。
これが平成から新しい世に変わる今
求められる「変わりドキ!」ではないでしょうか。

控えれば、必ず社会的IQがあがります。
浄化された新鮮な気持ちで、次の時代を迎え
いれることができる。
そう信じています。


<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」(かんき出版)「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)がある。最新刊は11月末に「ひきたよしあきの親塾」(朝日学生新聞社)https://amzn.to/2KQIDP2 を好評発売中

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