弱者の味方
今年は日本全国が、猛暑、大雨、大地震に
苦しめられました。
多くの被害があちらこちらに出て、
亡くなられた方、怪我をした方、
家を失った方も出ました。
この時期に私は出張が多かったため、
台風に追われて新幹線に乗ったり、
逆に台風のいる方向に飛行機で移動
したりしていました。
思えば、一度として被害にあうことなく、
傘をさしたこともないままこの時期を
乗り越えられた。
ありがたいことでした。
ホテルのテレビで、被害の状況を
見ていました。
ドローンが活用されるようになり、
以前よりはずっと被害状況がわかり
やすくなりました。
その反面、変わらないものがあります。
被害に遭われた方が、体育館などに
集まって、布団もろくにない中で、
不安な表情で耐えている姿。
東日本大震災からすでに7年の
歳月を経て、私たちは被害にあった
ときには当時と変わらぬ苦しみを
味わうことになるのです。
果たしてこれで景気がいいと
言えるのでしょうか。
力強く進歩している国と
言えるのでしょうか。
大きな祭典やイベントを誘致する
資格があるのでしょうか。
まるでテレビ報道が消え、
風化するのを待っているかのよう。
くさいものには蓋をする心境で、
人の苦しみを見て見ぬふりを
しているかのように見えるのです。
確かに自然災害は、人知の及ばぬ
ものではあります。
しかしここ数年を振り返ると、
暴力的な大雨や常軌を逸した
台風は「特別」なことではない
ことがわかります。
今年を見ると、
6月は 24年ぶりの大地震
7月は 10年ぶりの豪雨
8月は 7年ぶりの猛暑
9月は 25年ぶりの最強台風が
続いて起きました。
もはや日本人なら災害にいつ
あってもおかしくないくらいの
環境になっているのではないで
しょうか。
それでも、何ひとつ変わらない
のは、痛い目に合わなければ
わからない人が多いから。
その人たちが、この国の
舵取りをし、経済を動かし、
情報発信をしているからではないか。
そんな気さえしてしまうのです。
先日、朝日小学生新聞のコラム
「大勢の中のあなたへ3」に
「弱者の味方」
という一節を書きました。
これを読んだ弱冠26歳の市議会議員さんが、
「これは私に政治家になった初心を
忘れるなと言われているように読んだ」
とメッセージを送ってくれました。
この言葉がうれしかったのは、私が
上のように考え、憤っていたからです。
厳しい環境に置かれている日本。
この国が変わるには、「弱者の味方」
であることを政治、経済、道徳の中心に
おいたときだと確信しています。
少子高齢化の進む日本の変わりドキは
誰もが弱い人の視点から世界を
眺めるようになるときです。
<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」(かんき出版)最新刊は「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)がある。