髪を切ろう、服を変えよう
中学生から50代半ばまで、
ほぼ同じヘアスタイルでした。
高校のときに多少長くしたこともあります。
でもほんのひと時で、大学から先は
全く変わることがありませんでした。
「髪を短く切ってこい」
と昔の中学の野球部監督のようなことを
言ったのは、Dr.コパさん。
私が、54の時でした。
「本を出すなら、髪を切れ。
メガネも変えろ。今の自分から
脱皮しろ」
というのでした。
本を出版することと、
髪型やメガネを変えることに
どんな因果関係があるのでしょう。
私には理解不可能でした。
しかし、コパ先生は譲らない。
飲んでいた銀座のおでん屋に
俺の美容師を呼んでやるから
今すぐ切れ!とまで言うのです。
そこまで言うなら・・・
と思って週末に髪を切りました。
中学から変えたことのない
長い髪がチョキチョキと切られていく。
「一体、どんな顔になっちゃうのだろう」
不安で仕方ありませんでした。
「お、いいじゃないですか。
明るくなりましたね」
とカットしてくれた人が言う。
鏡を見ると、たしかにおでこが
全部でた分、顔が明るく見えました。
このときコパ先生がよく口にする
「脱皮」という言葉の意味が
わかった気になりました。
現状を変えるってとても
難しいもの。
ヘアスタイルひとつとっても
これだけ不安や葛藤があります。
しかし、いつも同じ服を着て、
同じヘアスタイルで、
同じ場所で同じものを食べ、
同じ人とつきあっているところに
進歩はありません。
心安らかな環境は、
裏を返せばぬるま湯。
そこから出る勇気をもたなければ
理想の自分に近づくことは
土台無理な話でしょう。
とはいえ、いきなり会社をやめる
ことも、引っ越すことも難しい。
新しいことを始めるといっても
なかなか手につくものではありません。
でも、ヘアスタイルを変えることは
できます。
明るい服に挑戦することはできます。
幸い私たちの脳は鈍感にできていて、
会社をやめる変革とヘアスタイルを
変える変革を全く同じ規模の
「変革」にとらえるそうです。
そこに大小の区別や重要度の序列が
ないんですね。
小さなことですが、
ヘアスタイルを変えたのは、
男の変わりドキ!
でした。
以降私は、ウォーキングをはじめたり
メガネを変えたりして、
ほぼ一年かけてイメージを変えて
いきました。
同時にやったことのない仕事、
書いたことのない分野でも、
ぬるま湯にとどまらないために
受けるようにしていきました。
今の自分がどうにも納得できない
と思っているあなた。
高いお金を出して、セミナーや
カウンセリングに行く前にやってみては
いかがでしょうか。
髪を切る。
服を変える。
外はそろそろ秋の気配。
イメージチェンジには
ぴったりの時期ですよ。
<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」(かんき出版)最新刊は「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)がある。