地金が出てきてからが本物
7月27日に新刊がでます。
「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)
です。
朝日小学生新聞にコラムを書き出してから
3冊目の本。
おかげさまで、多くの方に読んでもらえる
シリーズに成長しました。
今年は3月にも一冊だしたので、
これで2冊目。
ところが私は現在、9月発刊に向けて
執筆中です。
サラリーマン生活を続けながら、
コラムを書き、大学や小学校で授業をやる。
土日もほとんどないし、年がら年中
書いています。
夜中にふと、思うことがある。
「明日の朝になったら、もう何も
思いつかなくんじゃないだろうか。
ここで打ち止めかもしれない」
というのも、私の場合、
特に何を参考にするでもなく、
覚えていることを思い出して書いている。
自分で何を書こうと決めるのではなく、
体の中から自動的に出てくるものを
書き写している感じなのです。
心なのか頭なのか、どこかに
「ネタ倉庫」があって、番人が
鍵をあけてもってきます。
それがどんなネタなのか。
自分でも書いてみないとわからない。
時折、タクシーのラジオから流れた
一言がきっかけになります。
昼休みに立ち読みした本の一節が
浮かぶこともあります。
「あぁ、こんなことがあったな」
と思い出がリアルに蘇る日もあります。
こっぱずかしくて到底書けない話も
でてきてしまいます。
これらを自動筆記するみたいに書いてる。
私の書くものの最初の読者が、私といった
感覚なのです。
これが枯渇するのではないか。
歳を重ねて、アウトプットを重ねる人生は
きっとつらくなる。
「明日のジョー」みたいに真っ白になって
死んでいくイメージすらあります。
しかし、またこうも思うのです。
自分の中にある気取ったものや
外向けのエピソードはすでに出血
大サービスしてしまった。
だからこれからは、自分の地金が
でてくるはずだ。
飾りっ気なし。裸一貫、生地の私が
いよいよ顔を出してくる。
その正体がどんなものなのか、
私も未だに見ていません。
推測するにかなり性根の悪い奴の
ように思いません。
ものを書く仕事も、これからの
人生も、ここからが勝負。
着飾るための十八番が切れて
四苦八苦。
脱ぐものはもう一枚もありません!
となってから、体の奥から
自分の正体が湧き出てくる。
この感覚にしきりに苛まれている。
この苦しみこそが、
男の変わりドキ!
ではないでしょうか。
とにかく写経のように文章を書きます。
書いて書いて、矛盾も傲慢も偏屈も
全部追い出すと地金の自分が見えてくる。
地金の自分よ、こんにちは!
本は書き続けるものですね。
<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ(かんき出版)最新刊」がある。