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思い出の花火

毎年、伊勢神宮から頂く手帳で日記を
つけています。
一日に割り当てられているのは、4行。
いつもベッドサイドにあって、

「今日は何をしたんだっけ?」

と一日を1分ほどかけて思い出してみる。

記憶というのは、脳内にあがる花火のような
ものです。

ボーン、ボーンと夜空にあがる花火を
眺めるように、今日のトッピクスを眺めてみる。

ランチのときに同僚が話したこと。
駅のホームですれ違った人の顔。
電話をかけるのを忘れたこと。
チクリとささった彼女の一言。

手帳に書き留めた重要なプレゼンや会議
よりも、こんな些細なことが脳内花火になる。

その風景を手帳に書いていきます。

「Mさんとヴェトナム料理。娘のインスタ話。
怒りのピークは6秒。脳の集中は8秒。
鳩居堂で「ゆず」の匂い袋。
Sさん、ストレッチブーツ。足首細い!」

とこんな感じ。
明日になれば忘れてしまうような
「思い出の花火」を万年筆で書いていきます。

人間の記憶とは不思議なものです。
その日の出来事や自分の感情を克明に
残すより、心に浮かんだ風景や言葉の方が
ずっと残る。
あとで読み返しても、ぽっと浮かんだ
花火の記憶の方が、その日一日を思い出せる
のです。

夜寝る前に日記をつける効果は、
まだあります。

今日一日を棚卸しすることで、
頭の中で勝手に断捨離がはじまる
ようです。

私たちは睡眠の間に、脳内に
散らかった情報を整理しています。
一日を振り返り、日記をつけると
明らかに断捨離のレベルが高くなる。

「今日も疲れたなぁ。なのに、
明日も6時起きかよ・・・」

なんてつぶやいて、ベッドにもぐるより
明らかに前向きで一日を終えられる。
ストンと眠れます。

今年の日記は、あと3ページ残すのみ。

「いろいろなことがあったよなぁ」

とパラパラとノートをめくると、
たくさんの花火があがっています。

4月23日を見ると、

「南町田。結局何をやりたいの?の声。
57歳、あれもこれもの時代の終わり」

と書いてある。
皆さんには何一つわからないでしょうが、
私にはこれを見るだけで、
誕生日の翌日に、多くの仲間から

「結局やりたいことがわからない」

と言われた日だとわかる。
これだけで、ビールの味や夜の寒さ、
居酒屋で仲間が座った配置までを
詳細に思い出せます。

その後、頻繁に、

「結局、何がやりたいの?」

という言葉がでてくるのを見て、

「あぁ、今年一年はこれを探して
ガムシャラに動いた年だったんだ」

と、この一年の自分を振り返ることが
できるのです。

新年は、すぐそこです。
皆さんも、日記をつけてみては
いかがでしょうか。

過ぎていく一日一日を、
美しい花火のように眺めて
新しい朝を迎える。

この繰り返しが、
大人の変わりドキ!を
つくっていくのではないでしょうか。

あなたの来年が、深く、濃く、
前へと進みますように。


<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社 最新刊)がある。  

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