スヌーピーを初めて知ったのは、私が小学校3年生のとき。
1969年にアポロが月着陸をしたときでした。
ロケットの胴体に宇宙服を着たスヌーピーが描かれた。これによって一匹のビーグル犬が世界的な人気者になっていきました。
私はちょうどこの年に、従兄弟のお姉さんからもらった手紙で、小屋の上で寝るお腹の出た白い犬を知ります。
「なんだ?この犬?」
と思った次の瞬間にもう虜になっていました。「こいつは一生のつかいになるなぁ」と10歳にして感じたのです。事実、その通りになりました。
スヌーピーが登場する「ピーナツ」というマンガには、大人が登場しません。過去に一度だけ登場したことがあるそうですが、大ブーイングがアメリカで起きたそうで、作者のチャールス・M・シュルツさんは描くことをやめました。
子どもしかでてこない世界。
だけれど、そこには大人顔負けの光と影とペーソスがある。主人公のチャーリー・ブラウンは、「主人公」であるにも関わらず何をやってもダメな男。私は谷川俊太郎さんが翻訳した「ピーナツブック」を貪り読みました。「少年ジャンプ」や「少年チャンピオン」より「ピーナツ」でした。ここで谷川俊太郎さんの言葉に出会ったことが私の運命を大きく変えたような気がします。何はともあれ、私はスヌーピーから人生の多くを学んだのでした。
7月15日、オトハル主宰の講演がありました。40名前後の人に集まって頂き、私が「人生の変わりドキ!」について話すというものでした。
この集いも「ピーナツ」の影響を色濃く受けています。
集まり全体を小学校の「学級」になぞらえ、全員胸にひらがなの名札をつけます。はじまりと終わりには、リアル小学生の女の子がかわいい声で「起立、礼、着席!」とみんなに声をかけてくれました。
集まった方には、私の会社の同僚がいます。Facebookで知り合った友だちがいます。家族連れできてくれた方もいます。得意先もいます。教え子もきてくれました。
年代も境遇も、私との出会いもバラバラ。しかし、その夜はリアルな年齢を全部忘れて、全員が小学生の頃に戻る。「こども心」を真ん中において集まる。これが会の趣旨でした。
楽しんで頂けたかどうか、不安もあります。
まだまだ病み上がりで、汗がでたり、背中が痛くなったりしながらの話になりました。
しかし、すっかり気をよくした私は、9月にまた学級会を開催したいなと思っています。演目はまだ決まっていませんが、みんなでもう一度「ごんぎつね」を読もう!というのをやりたいと思っています。
これは子どもに向けてよく話すものですが、当然、子どもには言えない人間ドラマも含まれます。そんなエピソードもからめながら、今だから読める「ごんぎつね」をこども心満載で読んだら楽しいなと思っています。
学級会のメンバーは固定ではありません。
ただし、あまり大きなものにする気はなく。こじんまりと、人の体温が届く距離でやりたいと思っています。
次回、9月の集まりに、また素敵なピーナツが集まることを期待しています。みなさん、よろしくお願い致します。
<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂
クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」「大勢の中のあなたへ」(朝日新聞出版 8月10日発売)がある。