vol.7 すてきな人と出会う方法

出版記念の講演会の席で、こんな質問がきました。

「素敵な人と出会うには、どうすればいいでしょうか」

漠然とした質問ですが、気持ちはわかります。
私の本の多くの中には、素敵な先生や友人との出会いが
たくさん書かれているからです。
何かコツがあると思って聞いてくれたのでしょう。
でも、残念ながら、コツみたいなものはないのです。

誰かを好きになるにしても、
自分とは違う部分を発見し、イライラすることで
恋に落ちることがある。

それとは逆に、自分と同じ部分を見つけて
確かめ合うことで愛を確認することもある。

この異質な発見の「恋」と同質の発見の「愛」が
混在して摩擦熱を起こすことで「恋愛」に
なっていくわけです。

こうした相手をどうすれば見つけられるのか、
その方法は誰に聞いても、「ない」と答えると
思います。

しかし、方法がないわけではありません。
素敵な人と出会うコンディションをいつも
整えておくことは可能なんです。

上の文章を見てください。

「自分とは違う部分を発見し」
「自分と同じ部分を見つけて」

と両方の中に「自分」があります。

まずは、「自分」をよく知らなければ、
相手の良さなどわかるわけがない。
これが「出会いの基礎の基礎」です。

自分がわかっているから、異質も同質も
判断できる。
自分がなければ、見た目、その場の言動、
財産や学歴などにすぐ引っ張られてしまう。
これではお気に入りのアイドルを探す程度の
恋愛しかできません。

自分は過去に、どんなときに自分とは
違う異質の感情をもって、イライラした
ことがあるのか。
例えば、今は大好きな友だちも会った
当初は話が合わなくてイライラした。
そんな経験を、ありありと思い出してみる。

また自分は過去のどんなときに、同質な
気持ちをもってくれていることを知って
ホッとしたか。
そういう昔の気持ちに心を浸してみる。

その「イライラ」や「ホっとした」ときの
気持ちをいつも磨いていなければ、
これから会う人に対し、自分はどういう
感情を抱くのかがわからない。
これでは素敵な人に出会っていたとして
ほとんど気づくことはできません。

出会いは、一瞬のものですが、
その一瞬は、自分の全体でもあります。

一目あって、「あぁ、ホッとするな」と
感じるのは、あなたの過去の記憶を
丹念に辿れば、過去に同質の気持ちを
抱いたことがあるはず。

スティーブ・ジョブズの言葉を借りれば、

過去のドットと未来のドットが
結ばれる瞬間になるのです。

素敵な出会いを望むなら、まずは自分。
自分の過去のドットを丹念に思い起こす
作業の中から、新しい鉱脈が見つかるはず。

何事もそうですが、まずは人のことより
自分が大切なのです。

１日に一度は、「あの頃の自分」に戻って
感情を磨く訓練をしましょう。

・・・

＜ひきたよしあきプロフィール＞
株式会社　博報堂スピーチライターとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。
現在（財）博報財団にコラム「こどものコトダマ」、博報堂マーケティングエグゼクティブに「経営のコトダマ」、朝日小学生新聞「大勢の中のあなたへ４」、日経BP「カンパネラ」に「生きる力の強い女性」を執筆中。
著者に「あなたは言葉でできている」（実業之日本社）、「ゆっくり前へ　ことばの玩具箱」（京都書房）」、「大勢の中のあなたへ」（朝日学生新聞社）、「机の上に貼る一行」（朝日学生新聞社）、「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」（かんき出版）、「大勢の中のあなたへ２」（朝日学生新聞社）、「ひきたよしあきの親塾」（朝日学生新聞社）がある。
４月に「５日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本」（大和出版）、「博報堂スピーチライターが教える口下手のままでも伝わるプロの話し方 （かんき出版）が同時刊行。

絶賛販売中！
『５日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』（大和出版）
https://www.amazon.co.jp/dp/4804718516/

『博報堂スピーチライターが教える 口下手のままでも伝わるプロの話し方』（かんき出版）
https://www.amazon.co.jp/dp/4761274123/