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自分を新しくする術を知る

新しい年を迎えた瞬間、
私は早稲田にある穴八幡のお札を
貼り替えます。

子どもの頃は、父が磁石をコタツの
上に置き、

「今年は、南南西の方角だ」

などと言いながら吉方位を確かめました。

昨年とは違った場所にお札を貼ると、
新しい年がやってきたように思えたものです。

この習慣を受け継いで、
私は深夜にお札を貼っています。
たったこれだけのことなのに、
部屋が新しい空気に満ちて、
新年を感じることができるのです。

元旦になると初風呂を浴びる。
ここ数年は、九州から「屠蘇風呂」という
薬草の詰まった袋つめを頂いています。
それをお湯に落とすと独特な漢方薬の
匂いがする。
この香りに包まれて湯に浸かると、
昨年の厄が汗となって流れ、
体の奥底にある芯までがじっと温められる
気になります。
風呂から上がって真新しい下着を
身につけると、身体までが新しくなった
ような気がします。

元旦の夜は枕の下に「七福神の宝船」を描いた
絵を入れます。多くは京都下鴨神社で
買い求めたものですが、今年は親戚から
頂いた金箔を敷いて寝ました。

枕の下に入れたから必ずいい夢を
見るわけではありません。
しかし、大きな船に七福神が乗っている
姿を夢想しながら眠るのはけして悪いことじゃない。
ポジティブな気持ちで眠りにつけば、
翌朝は必ず明るい気分になるものです。

人によっては、「迷信だよ」「ばかばかしい」
と思うかもしれません。
私も、これでご利益があるとか、
幸福が舞い込んでくると思っているわけ
ではありません。
それでも毎年淡々と続けているのは、
西鶴の詠った

「大晦日さだめなき世の定めかな」

の気持ちがあるから。

365日は平等で、何一つ
変わらないものです。
だからこそ、私たちは自らの工夫で、
「定め」をつけていく必要がある。

「新しいぞ、私は!」

と叫べる瞬間を持つことは、とても
大切なことだと思うのです。

これはお正月だけのことではありません。

日々の生活の中でも、
昨日と今日の
今日と明日の「定め」を意識することは
生活の品質をあげるためにも必要です。

「丸二日、徹夜で作業した」

なんてことが武勇伝になるのは遠い昔の
こと。脳科学が発達した今となっては
精神論はともかく、非効率なのは否定の
しようもない。

短い時間でもベッドに入って寝て、
シャワーを浴びて、新しい下着に着替える
ことで、「新しい私」になれるのです。

2019年が始まって数日が過ぎました。

今年こそは、丁寧に時間を使って、
1日1日を粒だったものにしたい。
日々を「新しい私」にリセットする
知恵と工夫が身につく時、
自然と「男の変わりドキ!」が
やってくるのではないでしょうか。

この1年をご健勝に。
よき思い出が沢山残る日々を
過ごしてまいりましょう。


<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」(かんき出版)「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)がある。最新刊は11月末に「ひきたよしあきの親塾」(朝日学生新聞社)https://amzn.to/2KQIDP2 を好評発売中

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