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男のオトナ思春期  男の変わりドキ53 エレガンスの呪文

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エレガンスの呪文

小学校の頃でした。
フランスの俳優アラン・ドロンが
男性ファッションのCMに出演していました。

「ダァ〜バン セレレゴンス デュラモデルヌ」

と子どもの私には聞こえて、鼻の詰まったような
声を出してよく真似をしていたものです。

高校生になり、兄の友人にフランス語ができる人
にこれを尋ねると、

D'URBAN, c'est l'élégance de l'homme moderne.

と言ってるのだと教えてくれた。

「ダーバン。それは今の男のエレガンス」

という意味です。

これが私と「エレガンス」という言葉の
出会いでした。
男、それもアラン・ドロンのような
かっこいい男に使う言葉なんだと理解して
いたのです。

ところが、その後出会う「エレガンス」は、
大抵、女性のファンションに使われて
いました。

優雅で、上品で、洗練されている。

そんな女性およびファッションを語るとき
「エレガンス」は使われていたのです。

もともとの意味は、ラテン語の

「eligere:エレグレ」

という言葉。

「丁寧に選択」することが語源です。

注意深く、丁寧に、上質であることを
モノサシに選択を重ねること。

少しでも自分を向上させるものを、
生き方を、選んでいくこと。

その経験が洗練を生み、
シンプルな豊かさを生んでいく。
こんなイメージの言葉なんだと
だんだんわかってきました。

ふだんはなるべく外来語や
カタカナ英語は使わずに文章を
書くことを心得ています。
しかし、この「エレガンス」に
関しては、適当な日本語が
見つからず、このまま使用しています。

思い入れの強い分、
下手に訳すとイメージが
壊れると信じているのです。

もう20年も前になりますが、
パリの友人たちと
セルジュ ゲンズブールの話を
していました。

いつも無精髭でタバコを吹かし、
素敵な女性をはべらせて
酔っ払っていたシャンソン歌手。

このおっさんのことを
パリジャンたちが、

「奴は、エレガントだった」

というのです。

同じフランス人でも、アラン・ドロン
とは全く違う。
王子とカエルくらいの差があります。

興味をもって聞いてみると、

「確かなものを選択する目をもっていた」

と言うのです。
格好はだらしないけれど、
審美眼はすさまじい。
だから彼はエレガンスだと言う。

私はこの言葉に再び魅了されたのでした。

二つ道があるならば、
自分が向上する方を選びたい。

二つ持つならば、
今の潮流ではなく、5年10年の
風雪に耐える方を選びたい。

「エレガンス」という刀で、
無駄なものを削っていけば、
真善美があらわれる。

「エレガンス」というスコップ
で深く掘り下げていけば、
確かな未来を選択することができる。

男女を問わず、
「エレガンスたれ!」を心の
モノサシに置きたい。
よりよきものに執着することから
人生の変わりドキ!が
はじまるのではないでしょうか。

このところの日本に流れる
醜聞は、あまりにエレガンスさに
欠ける。

下品、卑怯、かっこ悪い。

こんなもので耳を汚していては
いけません。

D'URBAN, c'est l'élégance de l'homme moderne.

と自らに呪文をかけて、

エレガンスに毎日を送りたいものです。


<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ(かんき出版)最新刊」がある。

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