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男のオトナの思春期 男の変わりドキ ㉙ 「二項対立からの卒業」

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二項対立からの卒業

生まれて初めて、自分の立ち位置を明らかにしたのは、
プロ野球のどの球団を応援するかを決めたときでした。
父は中日ドラゴンズ、母と兄が読売巨人軍。
兄のお古ばかり着ていた私の目の前には、ジャイアンツの
ユニフォーム、それも背番号3があったのです。

「これ、着たくない」
「何、言ってるの。野球のユニフォームなんてどれも
同じだから。どうせ汚れるし」

阪神タイガースを応援していた私には、長島の背番号の
ついたジャイアンツのユニフォームだけは、殺されても
着たくない。あの時の強い気持ちが、私の「二項対立」への
芽生えでした。

「二項対立」とは、ふたつの概念に対立や矛盾が生じて
いること。
上の野球で言えば、「巨人」と「阪神」が対立の構図。
すぐにそれは「東京」と「大阪」へと発展し、
「早稲田」と「慶応」に注ぎ込まれていきました。
現在、所属している会社もまた、業界の二項対立の一翼を
担っています。

敵対勢力をつくって、それを批判する。
負けると、ただ感情的に悔しく、次に勝って溜飲をおろす。
人間が進歩する過程には欠かせないゲームなのかもしれません。

しかし、最近はこのやり方に疲れている自分がいます。
イギリスのEU離脱やトランプ政権に限らず、
右を見ても左をむいても、上も下もどちらを見ても、
「二項対立」だらけの世の中だからです。

対立の先鋭化を押し進めている大きな要因は、
インターネットでしょう。

検索履歴で「この人に適した話題」があがってくる
画面を見ながら、直感で感じたことを、考えもなしに匿名で
投稿する。
以前では考えられなかった無責任な言動が、面白半分に
二項対立をあおる。そしてマスコミが火をつける。

世界が、面白半分な投稿で埋め尽くされていく中、
私たちは以前よりもずっと住みにくい社会にいるように
思うのです。

「Aをとるか、Bをとるかではないんだよ。
その両者がダンスをする中で新しい枠組みが作られて
いくことを考えないと」

二項対立に辟易としている私に、こう教えてくれるのは、
長くハワイ大学で哲学を教えていた吉川宗男先生。
東洋と西洋の文化のはざまで悩み抜かれた先生は、
ふたつの概念がお互いに助け合って、新しい価値を
つくる哲学をつくり、シュバイツアー賞までとられています。

先日、尾道をいっしょに訪れたとき、先生が描いてくれた
ふたつの輪がダンスするメモ書きが、今のところ私の
次の「変わりドキ!」の航海図になっています。

あなたも、そろそろ二項対立から卒業してみませんか?
相反するものを統合していく新しい考え方をいっしょに
語りませんか。
私は今、色々な人にこの話をしたくてウズウズしています。


<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂
クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」最新刊「大勢の中のあなたへ」(朝日新聞出版)がある。  

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