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令和とこわれものの連鎖

もう10年ほど前のことです。

冷蔵庫と洗濯機と掃除機とファックスが
ほぼ同時に壊れたことがあります。

まるで呪いにかかったように、
ひと月の間にバタバタと壊れていきました。

会社から戻ると、キッチンが水浸しに
なっている。
夜中に生鮮食料品を処分し、水拭きを
するのは結構重労働でした。

「一体、僕がどんな悪いことをしたんだ?」

と天を仰いで神様に訴えたくもなりました。

近所の大型電気店にいくと、

「同じ時期に買いませんでしたか?」

と言われる。
「そうです」と答えると、

「よくあるんです。いっしょに購入したものは
不思議なくらい同じ時期に壊れるんです」

と言う。どうやら家電は連鎖して壊れる
ようです。

この秋。

まずトイレがおかしくなりました。
フラッシュのレバーが甘くなり、水が止まらなく
なりました。

今回も近所の電気店にいく。
私がくるのを待っていたかのように、
入ってすぐの展示コーナーにトイレが並び、
トイレ全体のリフォーム付きのプランが並んで
いました。

「せっかくだから・・・」

と思ってトイレを修理すると、

「この換気扇。お風呂場とつながっているん
ですよ。かなりカビがでて、ほとんど効いて
ませんね」

とリフォームの若者が言う。

それも修理してもらおうと思って風呂場に
いくと、気が緩んで、

「ついでだからお風呂場のパネルも
新しくなりますか?」

と言ってしまう。その後、お風呂も
フローリングの床も畳も新しくしました。

さて、ひと段落。
すっきりした部屋に満足しながら、朝、
歯を磨いていたら、ごろっと欠けた。
詰め物がとれたのかなと思ったら、
以前から弱いと指摘されていた奥歯が大きく
欠けたのでした。

運の悪いことに割れた鋭利な部分で舌を
傷つけてしまった。そこから舌根が腫れ上がり、
気の遠くなるような痛みに苛まれました。

それがよくなると、今度はパソコン。
いきなりキーボードが誤作動するようになった。
昨日まであんなに働いてくれたのに!

ここで思い出したのは、「連鎖」という言葉です。

家の私の身体と仕事、あるいは情報が
連鎖し、新陳代謝を求めている。
どれもこれもが、次のステージに向けて
「私たちを新品にしろ!」
と訴えかけているみたい。

その変化がぴったりと天皇陛下の「即位の礼」から
「大嘗祭」の時期、つまり「平成」から「令和」に
時代が動く時期だったのは単なる偶然でしょうか。

気にしなければ私たちは、自分の生活を
守ることばかりを考えてしまいます。
しかし、万物は流転している。
昨日と同じ太陽は昇りません。

脚下照顧の現状否定。
保守的な現状を破壊して、次のステージに
上がるための準備をする。

私はこの秋の「こわれもの連鎖」を眺めながら
そんなことを考えていました。

今は、何もかもが快適です。
このコラムも新しいパソコンでサクサク
書いています。

すべてを終えて、私の令和が、
はじまりました。

・・・

<ひきたよしあきプロフィール>
株式会社 博報堂スピーチライターとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。
現在(財)博報財団にコラム「こどものコトダマ」、博報堂マーケティングエグゼクティブに「経営のコトダマ」、朝日小学生新聞「大勢の中のあなたへ4」、日経BP「カンパネラ」に「生きる力の強い女性」を執筆中。
<著書>
「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)
「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)
「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)
「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社)
「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」(かんき出版)
「大勢の中のあなたへ2」(朝日学生新聞社)
「ひきたよしあきの親塾」(朝日学生新聞社)
「5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本」(大和出版)
「博報堂スピーチライターが教える口下手のままでも伝わるプロの話し方」 (かんき出版)

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質問力

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