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インプットとアウトプット

一日に3、4本の長いコラムをフェイスブックに書いています。
週に一度、新聞にコラムを書き、2週間に一度3つのコラムを
WEBに掲載しています。
本を書き、スピーチ原稿を書き、コピーを書き、
そして土日も休まず小学生たちに教えています。

「ひきたさんは、インプットをいつしているのですか?」

と尋ねられて、困った。
そういえば、インプットと言えるようなことをしていない。

最近、何の本を読んだだろうか。
思い出せない。
ネット、映画、テレビなど情報ツールを使って
得たものも記憶にない。

不安になったので、東京の「スヌーピーミュージアム」で
購入したアイデアノートを開いてみました。
不思議なもので、ここ限定の小型のリングノートと
STYLE-FITの4色ペンの相性がよく、鞄の中に
白ページをむき出しでいれています。
思いついたこと、聞いた話、読んだものの断片を
とにかく書いていく。

「ほめてくれる人のところに才能は集る」

「微笑 ただだまってニコッと笑え」

「バックトラッキング 相手の言ってることでネタをつくれ」

「忙しいときほど食べない」

「ユーモアはラテン語で『体液』のこと」

などといった言葉で、ひと月の間に3分の2ほどの
ページが使われていました。

その多くは、コラムの題材にならないものばかり。
実を言えばこのノートを見返すことはほとんどありません。

インプットとアウトプットについて、
人によって考え方は違うでしょう。

私は、まずアウトプットが先。
書いて書いて書いて書いて、
しゃべってしゃべってしゃべってしゃべって、
与えて与えて与えて与えて、
ひたすら種を蒔き続ける。

ヘトヘトになる。
脳みそから言葉が消えて、真っ白になる。
吐き出すだけ吐き出して、
背中とお腹がくっつく。

そこまでやると大量の空気と情報が
ほしくなるものです。

頭も心もからっぽだから、タクシーの運転手さんの
話も仲間の愚痴も母の小言も立ち読みした一言も
テレビから聞こえてきた一言半句も、
どれもこれも新鮮に聞こえてくるのです。

スヌーピーのノートはあくまで備忘録。
大切なのは、空っぽの脳に新鮮な言葉を
流し込むこと。
そしてまた、ひたすらアウトプットです。

詩人の谷川俊太郎さんが、

「詩を書くとき、
言葉の中に自分で入っていく。
恐山のいたこのように」

と言っています。

この気持ち、とてもよくわかります。
文章を書いて暮らしていくには、
自分の中の知識の埋蔵量なんててんで
役に立ちません。
入ってきた言葉を、吐いて使って、
新陳代謝を進めていく。

常に裸の脳みそと目と耳をもつことで、
新しいコラムと授業が生まれてくる。
そう信じています。

今日も、これからあと3本書きます。
明日また、おいしい言葉の深呼吸をするために。


<ひきたよしあきプロフィール>
1960年生まれ
株式会社 博報堂
クリエイティブ・プロデューサーとして働く傍らで、明治大学で講師を勤める。現在朝日小学生新聞にコラム「机の前に貼る一行」日経ウーマンオンラインに「あなたを変える魔法の本棚」を執筆中。著者に「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)」「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)「机の上に貼る一行」(朝日学生新聞社 最新刊)がある。  

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